*****胃潰瘍の再発をどう防ぐか?炎症を抑える治療*****
【山内】 私が十二指腸潰瘍になった時、お医者さまから説明されたのは、胃酸の分泌がひどくなると胃粘膜を自分で溶かしてしまい、そこがただれて潰瘍ができるということでした。
胃酸だけではなく、好中球による炎症が問題ということですね?
【岡嶋】 胃潰瘍における炎症の重要性は、胃粘膜を鍋に入れ、煮立たせた状態を想像すると分かりやすいと思います。鍋の下で、胃粘膜を煮込む炎が好中球です.煮込まれた胃粘膜は敏感になりますので、そこに胃酸が作用すると、潰瘍ができて、痛みや胸やけなどの自発症状がでてきます。これまでの治療は、酸の分泌を抑える、つまり鍋にフタをするだけの治療で、鍋の下で然えている炎はそのままです。ですから、薬を飲むのをやめるとフタが取れてすぐに再発する。再発を抑制することまで考えると、重要なのは炎症を抑えることなのです。
ピロリ菌は、炎症の原因なので、除菌すると炎症が治まり、正常な胃粘膜の状態が回復します。除菌療法というのは、粘膜の炎症を抑制する治療と考えれば、理解しやすいと思います.下から炎で煮込まれることのない正常の胃粘膜は、胃の粘液に覆われています。この粘液は、胃粘膜が胃酸によって消化されるのを防いでくれるのです。ピロリ薗以外の原因による胃潰瘍でも胃粘膜の炎症が病変の母地になっていますから、除菌に限らず、薬剤でも炎症を抑えればいいわけです。
【山内】 では実際、炎症を抑えるような働きをする薬剤があるのですか.?
【高久】 今、胃潰瘍の治療によく使われるH2ブロッカーは、胃酸が出るときに働くヒスタミン受容体(H2レセプター)を抑制し、酸分泌を抑える薬です。われわれの研究で、そのなかの塩酸ラニチジンという薬剤には、好中球の活性化を抑制する、つまり炎症を抑制する作用があることがわかりました.動物実験でも、ストレスをかけたネズミの胃粘膜で炎症を抑制しました。
炎症を抑制すると酸をかけても病変ができにくくなります。人でも炎症を抑制する可能性があると考えられます.また、胃の粘液を増やしたり、胃の防御因子を増やすような薬剤のなかにも、炎症を抑える作用があることが分かりました.今後は、そういう薬剤を用いて炎症を抑制するという新しい概念で、胃潰瘍を治療することが重要だと思います。
****潰瘍治療の新しい考え方・・ピロリ菌だけが悪者ではない・・・・・****
【山内】 高久先生、昔は胃潰瘍というと、手術で治すという時代もありましたね.
実際は年間4000人ぐらいが穿孔や出血で亡くなっています。出血は早く処置すれば内視鏡でほとんど止血でき、
手術しないですみますが、遅れると出血多量で亡くなってしまいます。
消化性潰瘍は今でも、放っておくと非常に危険な病気なんです。
【山内】 実は私の父も胃穿孔になり、手術で胃を取りました.敗血症の心配などがあり、結構大変でした.いい薬ができたからといって油断してはいけないということですね。最後に、潰瘍治療について今後の課題や期待などがあればお願いします。
【高久】 昔から胃潰瘍も十二拍腸潰瘍も薬で治すのが原則でしたが、再発を繰り返すような場合は手術せぎるをえませんでした。H2ブロッカーやプロトポンプ阻害薬などのいい薬ができてからは、ほとんど手術をしなくてもすむようになりましたね。
【荒川】 ただ、そういうすごくいい薬ができて、消化性潰瘍は治りやすい病気と考えられがちですが、
【荒川】 除菌療法が保険適用になり、これから潰瘍治療の主流になってくると思います.しかし、消化性潰瘍すべての人が除菌の対象になるかというと、私はそう思いません。除菌しても再発する人、除菌に失敗しても再発しない人がいるように、潰瘍とは関係なくピロリ薗に感染している人もいるはずです.
副作用などの問題もありますから、
除菌の対象は 再発を繰り返している人、
あるいは 以前に穿孔や出血などの重大な合併症を経験した人 などに限るべきです。
初発の人の場合は従来の治療、できればラニチジンやある種の胃粘膜防御薬のような炎症を押えるような杭潰瘍薬を投与して、その後再発するかどうかをみていくことが大事だろうと思います。
【岡嶋】 ピロリ菌ばかりが胃潰瘍の原因のすべてのように思われていますが、実際は解熱鎮痛薬やストレスで起こる潰瘍もあります。除菌で炎症を抑制するというメカニズムをほかの潰瘍治療に応用するという意味でも、やはり炎症を抑制するような薬物治療を行っていくことが重要です.
また、ピロリ菌に感染していても潰瘍まで至らない人もたくさんいます.そういう除菌の対象にならない人も、
胃粘膜の萎縮が進行していくと考えられます。
萎縮性胃炎を防ぐためにも、薬物で炎症を抑えていく治療が役立つと思います.
【高久】 両先生のお話のように、潰瘍の発生にはピロリ菌その他の原因による炎症と胃酸の両方が関係するならば、除菌と同時に、炎症を抑える薬を処方することも大事になってくると思います.
もちろん、抗生物質は副作用もありますし、最近は世界的に耐性薗の出現が同題になっています。
効果を確かめないで 長期に除菌療法を続けることは問題です.
炎症を抑える薬と併用して慎重に様子をみることが大事ではないでしょうか?
【山内】 潰瘍体験者として大変参考になりました。どうもありがとうごぎいました.
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